特別対談企画 『巨人たちのできるまで』 第三弾 オルタナティブフォークユニット「表現(hyogen)」

特別対談 『巨人たちのできるまで』 第二弾 オルタナティブフォークユニット 表現(hyogen)

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とうとう直前に迫った、地下空港第10回公演『 巨 人 達 の 国 々 』。
地下空港の全精力をあげてお届けするこの新作音楽劇の上演に先立ち、
その世界を作り上げる表現者たちの素顔に迫る特別対談企画『巨人たちのできるまで』。


全三回にわたってお送りするこの企画の最終章は、
今回地下空港と初のコラボレーションとなる
オルタナティブフォークユニット「表現(hyogen)」。

その強烈な音楽で作品を彩る彼らのルーツに迫ります。


(聞き手:伊藤靖朗)


<<『巨人たちのできるまで』 第一弾 衣装部 大岡舞、安田美路加、正金彩>>はこちら

<<『巨人たちのできるまで』 第二弾 女優陣 川根有子、佐藤美佐子、千速裕子、野村真理、美舟ノア>>はこちら



ー表現(hyogen)の音楽ー

伊藤 それではまず、簡単に表現(hyogen)(以下「表現」)が結成した経緯を教えて頂けますか?
園田 もともとはベースの僕とギタリストと二人でやっていたんです。それから色々とメンバーを探し、まずボーカルの佐藤公哉
   くんに出会って三人になりました。でもその後そのギタリストがやめてしまって、古川麦(バク)くんが入って、そのまま
   2年くらい活動し、2009年に大学の卒業制作のときにアコーディオンの権藤真由ちゃんが正式に加入して、今の形に
   なりましたね。
伊藤 なるほど!僕が初めて表現のライブを見た時に、セロという別のバンドと十何人っていう大人数で演奏をしていたんです
   が、その中心に四人がいて、なんというかすごく求心力があるグループだな!って感じたんですよね。では、みなさんの
   考える「表現らしさ」ってどんな所ですかね?
古川 うーん、、こういう感じ。笑
佐藤 黙ってしまう。笑
権藤 でも、最近は前より喋るようになってきたよね。笑
鈴木 うんうん。笑 最初に僕が表現の練習に参加したとき、誰も喋らないんですよね。たまに麦くんがぼそっと何か言うぐらい
   で。僕はどっちかっていうと場を盛り上げるタイプなんですが、とっかかりがなくて気まずいなぁって思ったのを覚えて
   ます。笑
権藤 私もそんな感じだったな。笑
伊藤 そうなんだ!笑 じゃあ曲作りは、セッションしながら??
佐藤 そうですね。昔はベースのフレーズから作ることが多かったんですが、最近は麦がギターでコードを弾いて、それに僕
   がメロディーをつけるっていうパターンが多いかな。
伊藤 へぇ!じゃあ、今回は劇中歌をメンバーの中でそれぞれ担当分けして作ってもらってるけど、それは表現にとって新しい
   やり方だったのかな?
佐藤 そうですね、新鮮な感じがします。
伊藤 歌詞は公哉さんが書いてるんですか?
佐藤 基本的には僕ですね。でも、もともと作詞って好きじゃないんですよ。それで空也くんとかに「書いてよ」って言ったり
   もしてたんですけど、なんだかんだで僕が無理して書いたりしてましたね。笑
権藤 ライブ当日に、本番直前に詞を書いたりしてたよね?笑リハのあとにカフェに行ってそこで書いて、、、みたいな。
伊藤 えー!すごい!
鈴木 なんか、最初は「言葉」っていうよりも「音」っていう感じだよね?
佐藤 そうだね。なんかこう、「宇宙語」みたいな。笑 セッションしながら即興で歌ったりするときは、普通の言葉じゃなく
   て、変な呪文を唱えてるみたいな感じですね。
伊藤 へぇ・・・!!そこに言葉を当てはめていくんですか??
佐藤 そうですね。皆で演奏しているときに感じたイメージとかから書いていく感じですね。
伊藤 ほうほう!じゃあ、チェリストの関口さんから見た表現の魅力ってどんなところですか?
関口 僕は表現の他にもサポートでバンドに入ることがあるんですが、表現と他のバンドとの違いは、表現で演奏するときって、
   絶対に軽くは入れないんですよね。なんていうか、、おなかの底からウァーーーーーってやって入っていかないと、入れない。
   音を合わせるというよりも、内面を同化させていく感じ。それは他のバンドにもない感覚ですね。
伊藤 なるほど・・・!僕もリスナーとしてだけどその感覚すごく分かります。前に2ndアルバムのリリースライブを三軒茶屋
   で見たときに、表現の音楽がこう、腹の底に効いてくる感じがあって!それがすごく印象に残ったんです。
関口 うんうん、でも最近はもっとディープになってる気がしますね!本当にこう、言葉じゃない何かを同化させないと入って
   いけないんですよね。

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左から・・・鈴木竜一郎(Dr,Perc)権藤真由(Vo,Acc)佐藤公哉(Vo,Vn)園田空也(Ba)古川麦(Vo,Gt)関口将史(当公演はお休み)

ー影響を受けた音楽ー

伊藤 いやー面白いですね!では次に、皆さんそれぞれ好きな音楽、影響を受けた音楽を教えて下さい!
古川 僕はもともとボサノヴァをやっていたので、ジョアン・ジルベルトには影響を受けましたね。それは表現の音楽をやる上
   でも出ていると思います。
権藤 私は幼稚園から高校卒業まで毎朝讃美歌を歌っていたので、それがルーツになっていると思います。習い事でもピアノを
   やっていたのでクラシックもよく聞いてましたね。でも最近は、表現のみんなのオススメの音楽を聞いたりしています。最近
   の表現の音楽には、土着のものや、キャッチーな西洋音楽の要素など、色んなものが混ざってきているので、色々聞いてますね。
園田 僕は、韓国のアイドルでユンナっていう歌手がいるんですが、最近よく聞きますね。笑 それから、倉木麻衣をまた聞き
   直してみたり、、、。ポップスが好きですね。
伊藤 へえ!それは意外ですね!
園田 なんかこう、精神性や音楽性よりも、まず楽しませてくれるじゃないですか?そこに惹かれますね。
伊藤 なるほど。公哉さんは??
佐藤 タラフドゥハイドゥークスっていうルーマニアのジプシーバンドがいるんですが、もう何回聞いても感動しますね。
   YouTubeでライブの映像を見ると、何回見ても泣きそうになります。あとはファイルーズっていうレバノンポップスとか、、、
   色々聞いてます。
権藤 ジプシー音楽は私にとっても、今までの音楽観を覆された大事な音楽ですね。
伊藤 なるほど・・・!!こうやって聞いてみると、めちゃくちゃ幅広いんですね!表現の音楽って、国籍がなくなるというか、
   風景がすかーーっと広がるような感じがあるんですけど、そういう皆さんの中の色んな要素が自然と混ざり合って出来て
   いるんだなぁ!って思いましたね!

ー地下空港についてー

伊藤 それでは次に、今までも表現の皆さんには地下空港の劇を観て頂いていると思うんですが、地下空港はどんな印象ですか?
権藤 靖朗さんと私は、物事に対する切り口が全然違う。でも地下空港の作品を見ると、自分にとって大事なことが、違う言葉
   で語られている。これはすごいことだっていつも思います。自分の想像ではつながらない出来事が、ちゃんと劇的に構成
   されていて、ほんとに面白いな!って。もう5年間の付き合いがあるので、信頼してます。笑
伊藤 ありがとうございます。笑 じゃあ空也さんはどうですか?
園田 僕は、バランス感覚がすごくいいなって見てて思います。あと、色んな物事がでてきてキャッチーだなって思いますね。
   単純に面白いなって思わせてくれる。うん、とにかくバランスがいいなって感じます。
伊藤 ありがとうございます!うんうん、なんというか、おばあちゃんからギャルまで楽しめるように!っていうのはいつも
   ありますね。笑 麦くんは?
古川 僕は2005年に『部屋とTシャツと鼠』を見ただけだったんですが、正直に言うと、その時は言葉が先行して情報量
   が多いように感じてしまって、見てて疲れてしまったんですね。でも今日通し稽古を見てみて、今空也が言っていたみたいに、
   バランスが良くて見やすいな!って感じましたね。
伊藤 なるほど・・・!でも、そうですね、ほんとその通りで、昔は自分が考えていることを出すという側面が強かったなって
   自分で思っていて、もっと見やすくしたい!って考えだしたのがその2005年あたりなんですよね。どうやったらもっと
   お客様と呼応できるかということをはかり始めたというか。
古川 うんうん、ほんと今日見てみて、洗練されているな!っていう印象を受けました。
伊藤 いやはやありがとうございます。笑 そう、無駄を省く、削っていくことで、もっと中身が現れるように・・・!って
   考えてます。公哉さんはいかがですか?
佐藤 僕は『ストラップ・オン・ザ・サードクライシス』と『轟きの山脈』を観させて頂いたんですが、今回一緒にやること
   になって靖朗さんから作品の説明を受けたときに、社会的なテーマを提示されたのがすごく意外だったんですね。社会的な
   テーマを掲げて作っているようには見えなかったので。今回の作品も、パッと見はそこに目が行かないというか、テーマは
   はっきりしているけどそこに全てが集約されているわけではない。幹だけじゃなくて色んな要素があちこちから枝を出した
   まま残されている。そこは好きですね。
伊藤 ありがとうございます。
佐藤 それと地下空港の作品は、演劇なんだけど、時々アニメを観ているような感覚で心を動かされることがあって、それがすごく
   新鮮ですね。ジブリのようなドラマチックなシーンだなぁ!って。
伊藤 あ、それはですね、僕自身ジブリが大好きなんですよね。笑
佐藤 なるほど!笑 なんというか、表現もジブリと相性がいいような気がしてます。笑

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ー『巨人達の国々』についてー

伊藤 あはは!それは良かった!笑 では、今回の『巨人達の国々』ですが、こんな感じにしたい!っていうのはありますか?
佐藤 そうですね、せっかくの生演奏なので、ライブで演奏しているパワーが途切れないように、音を出していないときでも
   ライブが続いているような二時間にしたいですね。
伊藤 うんうん!もうどんどん、表現の持っているパワーを出して欲しい!って思います。表現の音楽のうねるような波が押し
   寄せて、それで役者たちの芝居が変わっていくくらい。それがあってのこの劇だと思うし、これから一緒に作業をしていく
   のが本当に楽しみです!それでは最後に、お客様に向けて一言ずつお願いします!
古川 なんか、昔ゲームでクロノトリガーってあったじゃないですか?ああいうエッセンスが出せたらなと。壮大なゲームを
   やり切ったような感覚が伝わればいいなと思います。
権藤 まだ曲が完成してなくてドキドキしつつも、、、きっといいものになるし、見終わった後に、世界の覗き穴が一つ増える
   ような作品になったらいいなと思います。是非観に来て下さい!!
園田 今日通し稽古を単純に観客として見てみて、絶対に面白い作品になると確信しました!これから表現も頑張ります!!
佐藤 全部は分からなくてもすごいものを観た!っていうことになったらいいなと思います。
鈴木 これを見ろ!そして聞け!!って感じですかね!!
伊藤 ありがとう!頑張りましょう!!!



それぞれにルーツの異なるメンバーが集い、
独自の大きな音の波を奏でる表現(hyogen)の音楽。
それが地下空港の世界と相まって、どんな舞台が生まれるのか?!

皆様是非、中野ザ・ポケットにてご体感下さい!!



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表現(hyogen)  権藤真由、佐藤公哉、園田空也、古川麦
サポートメンバー  鈴木竜一郎、関口将史(当公演はお休み)
聞き手       主宰・伊藤靖朗
写真        かとうちなつ