特別対談企画 『巨人たちのできるまで』 第二弾 女優陣 川根有子、佐藤美佐子、千速裕子、野村真理、美舟ノア

特別対談 『巨人たちのできるまで』 第二弾 女優陣 川根有子、佐藤美佐子、千速裕子、野村真理、美舟ノア

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六月に控えた、地下空港第10回公演『 巨 人 達 の 国 々 』。
地下空港の全精力をあげてお届けするこの新作音楽劇の上演に先立ち、
その世界を作り上げる表現者たちの素顔に迫る特別対談企画『巨人たちのできるまで』。


全三回にわたってお送りするこの企画の第二弾は、
強烈なインパクトで作品を彩る五人の女優、
川根有子、佐藤美佐子、千速裕子、野村真理、美舟ノア。
『巨人達の国々』に対する思い。
そして、彼女たちにとって芝居とは?
そのルーツに迫ります。


(聞き手:伊藤靖朗)


<<『巨人たちのできるまで』 第一弾 衣装部 大岡舞、安田美路加、正金彩>>はこちら

<<『巨人たちのできるまで』 第三弾 オルタナティブフォークユニット「表現(hyogen)」>>はこちら



ー女優の道へのきっかけー

伊藤 ではまず、この対談シリーズに初登場の三人(佐藤美佐子、千速裕子、美舟ノア)に聞きたいんですが、芝居の道に進んだ
   きっかけを教えて下さい。じゃあまずは、美佐子さんから!
佐藤 私は幼稚園の頃から、お遊戯会や学芸会とかで演技をするのが単純に好きだったんです。役の立候補を集う時にはいつも
   「ハイハイ!!」ってすぐに手を挙げてましたね。笑 
伊藤 へぇ!そんなに早くから!
佐藤 一度クリスマス会で『イエス様の誕生』をやった時に、「みさこちゃんはお姫様の役をやりたい?天使の役をやりたい?」
   って先生に聞かれて、「じゃあお姫様がやりたい!」って答えたんです。それで実際お稽古が始まったら、実は一番良い役の
   マリア様がもうすでに別の子に決まっていて、それがすごく悔しかったのを覚えてますね。笑
川根 あっ!そういえばあたし幼稚園でマリア様やった!
佐藤 えー!なんだかすごい悔しい!!爆笑
伊藤 あらあら!これまた偶然ですね。笑 じゃあその後も、演劇部とかに入ってたんですか?
佐藤 中学の時は演劇部と合唱部の掛け持ちをしていました。それで高校を出て、何がやりたいかって考えた時に、芝居以外思い
   当たらなかったんですよね・・・。
伊藤 なるほど!ノアちゃんは?
美舟 私もみさこさんに似ていて、ちっちゃい頃から演技が好きだったんです。三才のとき『メリーポピンズ』に憧れて、母親に
   白いドレスと日傘を買ってもらってテレビの前でジュリーアンドリュースの真似をして踊ってましたね。笑
伊藤 それはすごいね!笑
美舟 私も幼稚園で『イエス様の誕生』をやって、初めてやったのが導きの星という役だったんですが、独白のシーンがあったんですね。それが
   すごく好きで。何か自分とは違うものになるのが好きだったんだと思います。当時着物が好きだったっていうのもあって、
   幼稚園で将来の夢を書くときには「かぐや姫になりたい」って本気で書いてました。笑
伊藤 おおー。笑 じゃあノアちゃんもその後学校では演劇部?
美舟 やってましたね!それで就職活動をするときに、「芝居がなくなったら生きていけない!」って思って、芝居を続けること
   にしたんです。
佐藤 わかる!私もほんとに、この先芝居がなくなったらっていうことが考えられない、信じられないって思いましたね。
伊藤 なるほど!うん、僕も自分が、例えば会社員になっている人生は想像できなかったですね。やっぱりそういうのって「感覚」
   だったりしますよね。裕子ちゃんは?
千速 私は大学三年のときに友達に誘われたのがきっかけですね。その誘ってくれた子のことを「洋服とかのセンスがいいな」
   って思っていたのでやってみようと思ったんですが、その時に、初めて集団行動が楽しいって思ったんです。それまでは高校も
   帰宅部で、大学でもサークルに入っていなかったんですが、初めて集団でいることに居心地のよさを感じたんですよね。
伊藤 ほうほう。

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ー仮面をつけること、はがすことー

千速 変な話かもしれないけど、私それまでずっと、化粧をしないでスッピンで外に出たことがなかったんですよ。ちょっとコンビニ
   まで行くっていう時でもささっと化粧してから行ったりして。でもその舞台に参加して、「あ、こんな風にスッピンでいられる
   世界があるんだ」って思ったんです。ちょうどそれまでの自分に息詰りを感じていたところで、きっとこういう世界を知った方が
   良い人生になるって思い、それから流れ流れて、今もやってますね。笑
伊藤 へぇ!そうだったんだ!なんか、舞台そのものって逆に化粧をして、自分と他のものになるっていう行為じゃない?だから
   すごく不思議!
川根 でも私もそれすごくよくわかる!私も芝居をすることで逆にすごく自由になれたと思う。なんていうか、いいわけになる
   じゃない?舞台上での色んな台詞や、行動って台本に書いてあるわけだから。でもそれを掘り下げることで、逆に自分を見つける、
   自分の本当の気持ちに出会うってすごくあると思うな。
美舟 うんうん。私も最初は、芝居って仮面をつけることだと思ってたけど、本当は反対で、仮面をはがすことなのかもしれないな
   って思いますね。
伊藤 なるほどね・・・!真理はどう?
野村 うーん、私は両方あると思いますね。両方やってる気がする。もちろん仮面をはがすことも大事だけど、やっぱり自分と違う人
   になるっていう作業は、仮面をつけることが必要になるとも思うかなぁ。
千速 そうだね。ちょうどこの前真理さんと二人で話してたんですけど、今回の真理さんの役の女性の気持ちが私はとてもよく
   わかるんですよ。でも真理さん自身はその役から遠いんですよね。
野村 そうそう!逆もしかりで、私は裕子さんの役の女性の気持ちがほんとによくわかる。笑
千速 それで私自身は自分の役からは遠くて。笑 そういう風に、違う人の人生を疑似体験できるのが面白いですよね。
川根 でも私はやっぱりそこでいかに自分を掘り起こすかだって思うな。「真似をする」というよりも、ちょっとでも自分の中に
   潜んでいる気持ちを育て上げるというか。
佐藤 それを見ざるを得なくなりますよね。でも真理さんの言う通り、役によってそのバランスって変わりますよね。
美舟 私の場合は、その役の要素を取り入れられるだけ取り入れて、最後にそれを全部捨てるんです。それが仮面をはがす瞬間なのかも。
千速 あるいは他人という仮面をかぶれるから逆に解放できるっていうこともあるのかもしれませんね。
佐藤 うんうん。なんていうか、話す言葉は他人が書いたセリフなんだけど、逆に日常よりもよっぽど自由だって感じますね。
   そういう意味ではサンクチュアリ、聖域ですね、舞台の上は。
川根 色んな恋もできるしね!舞台上で。笑

ー作品についてー

伊藤 なるほど、いやぁ面白いですね!それでは、今回の『巨人達の国々』という作品についてはいかがですか?
佐藤 31才になる靖朗さんが、今こういう目で世界を捉えているのか!というのが一番面白いですね。今の同年代の人々にも共感を
   得られるんじゃないかなって思います。
川根 うんうん。ほんとに今、先進国の人々がどうやって生きていけばいいのか分からなくなってる。豊かさを求めて、欲を持って
   前に進むという前提が破綻した今、自分の幸福をどこにおくのか。神話と現在を絡ませて描く中で、そういうことを考える一つの
   きっかけになる作品だと思います。
伊藤 そうですね。今強く思うのは、一見大きくて遠くに感じる経済の問題とかが、実はびっくりするぐらい自分に結びついている、
   自分の身に起きているということなんです。僕自身も、大学を出てから何をしようか迷い、地下空港も三年休んだ。でもその時に
   社会の中で自分の身に起きた色々なことに納得がいかなかった。だから、自分と社会との関連性を見出して、それに納得する
   までは先に進まないぞ!っていう気持ちで劇をやろうと再確認して、それは今でも続いていると思いますね。
美舟 私も最初に台本を読んだとき、靖朗さんはしっかりと自分自身の視点から社会を見つめている人なんだなって思ったんです。
   そこに書かれていることを役者として理解するには、私の持っている知識やボキャブラリーでは足りなくて、あ、勉強しなきゃ!
   とも思ったんですが、、、。でもそこを取っ払っても、この話には巨人や悪者や、それと闘う人が出てきて、そこには神話の要素も
   描かれていて、子供時代に読んだファンタジーのようで。最初にコンセプトだけ聞いたときはもっと難しい本になるのかなって
   思ってたんですけど、実際はとても入りやすかった。だから靖朗さんには、ストーリーを楽しみながらも社会を考えるきっかけ
   になる作品を作る才能があるんだなぁ!って思いましたね。
伊藤 ありがとうございます。笑
佐藤 靖朗さんの書く話って、ほんと設定が突拍子もなかったりするけど、神話とかおとぎ話もそうですよね。大事なことを寓話的に
   語るというか。
川根 この『巨人〜』も、語り継がれるといいね。笑

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左から・・・野村真理、佐藤美佐子、千速裕子、美舟ノア、川根有子

ー好きな女優ー

伊藤 うんうんそうですね!笑 では次に、好きな女優・俳優をそれぞれお聞きしたいんですが、、、じゃあ、真理から!
野村 私は、寺島しのぶさんに似てるって言われ続けているので、いやでも気になってしまう。笑
一同 納得!!!笑
野村 でも実際彼女の演技ってすごく惹き付けられるものがあるし、本当に素敵な女優さんだと思うから、彼女に少しでも近づき
   たいし、いつか超えたい!
伊藤 おお!!その意気だ!!ノアちゃんは?
美舟 私は若尾文子さん!
千速 あー!超いいよね!!
美舟 もう存在が魅力的ですね。品があって色気があって。声が低く欲望むき出しで、強さと弱さをさらけ出した彼女の演技を
   見てると、ほんとに血が騒ぎます。ああいう芝居がしたい!って思ってますね。
佐藤 私も若尾さんは大好きですね!一度私自身『雪之丞変化』に出演した時に、若尾さんがやられたのと同じ浪路役をやらせて
   頂いて、その映画を観てみたら、この役を自分がやるのか!と愕然としました。笑 で、も、、、一番好きなのは小林聡美さんかな。
伊藤 ああ〜、いいですよね!
佐藤 もうどれだけ見てても飽きないんですよね。親近感を感じさせるけれど、実はコミカルな演技ってすごく技術のいること
   だから・・・天才だ!って思っています。それに、まずは人としてしっかり生活を送っているのだろうな、と思わされます。
伊藤 なるほど〜。裕子ちゃんは?
千速 私はベタですけど、マリリン・モンロー!あとマレーネ・ディートリッヒかな。スターが好きなんですかね。なんか、あの
   時代のやり方の中で、監督からの要求を完璧に消化しているのがすごいなって。「こういう風にやりたい」っていうのが見え
   ちゃう人が多い中で、完璧に作り込まれたものを見せて、さらにスターでもあるっていう。
伊藤 確かにマリリン・モンローとか、役者っていう枠を超えて名前が残ってるもんね!じゃあ最後に川根さん!
川根 佐藤浩一。タイプだから♡

伊藤 わははは!!ありがとうございます。笑 えーじゃあ最後に、お客様に向けて一言ずつお願いします。
川根 今とても稽古が楽しい!すごく良いメンバーだと思います。是非お楽しみに!!
千速 見逃せないよ〜!見といた方がいいよ〜!
佐藤 劇場ならではの靖朗さんの世界に是非巻き込まれてみて欲しいです!日常から離れているようで、それは自分のことかも
   しれない・・・!
美舟 お客様を巨人の国へさらいます!
野村 以下同文!!
伊藤 ありがとう!頑張りましょう!!



芝居に対して、それぞれに熱い思いを抱く五人の女優。
その強烈な意志と個性が、中野ザ・ポケットの空間でどのように華開くのか?!

皆様是非!ご期待下さい!!



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女優  川根有子、佐藤美佐子、千速裕子、野村真理、美舟ノア
聞き手 主宰・伊藤靖朗
写真  かとうちなつ