ストクラ特別対談『継ぐ。』

佇む柴やお

待望の地下空港番外実験公演、『ストラップ・オン・ザ・サードクライシス』!
本作にて初主演を務める柴やお。地下空港が誇るイケメン俳優の素顔に、主宰・伊藤靖朗が迫った特別対談!!
クールな外見に内に秘められた強烈なパッションを、是非ご覧ください!!!

(聞き手:伊藤靖朗)


―役の人物を介して、知らない世界を生きる―

 はじめて役者をやったのはいつ?
 大学2年のときに、日中両国の大学生で合作演劇を作るという有志の企画に参加したのが最初です。
 それがきっかけ?
 あとは今村洋一くんの影響もかなり大きいです。洋一くんは同じ地下空港の先輩役者というだけでなく、大学の先輩でもあって、
  合作演劇の企画に洋一くんも役者として参加していたんです。洋一くんには「演技することの楽しさを教えてもらったような
  気がします。今でも、僕が役者をやる最大の理由は「楽しいから」です。
 どういうところが楽しいの?
 役の人生を実際に生きることで、全く新しい体験ができるところです。ある役を演じるには、その役自身だけでなく、その役を
  取り巻く環境をも演技に落とし込まなければなりません。イメージの力を最大限に働かせることによって、物語の世界を実際に
  生きる。そうやって初めてその役が生きた人間として見えてくるのだと思います。役の人物の感性を介して、知らない世界を
  生きるというのは、もの凄く刺激的でワクワクするんです。

―女優を目指した母から継いだ、俳優としての夢―

 ご両親は演劇の経験とかあるの?
 母は若い頃、地元で噂の小町だったみたいで(笑)、女優になるのが夢だったらしいんです。バレエなどのダンスを小さい頃から
  練習して、名門の文芸学校からスカウトが来たほどだったそうです。しかし、そうして名門に入って「さあこれから女優への道を
  歩もう」、というタイミングで文化大革命が起こり、全てパアになってしまったんです。昔の話をするときに、母は「夢を断たれ
  た、悔しい」、とよく言っていたのを覚えています。
 それはくやしいね…。それでできなくなって?
 文革が終わった頃には、母はもうボロボロになっていたそうです。母は1年前に病気で亡くなってしまったんですが、亡くなる
  直前、僕が「俳優をやりたい」と言ったら「私の夢をあなたに託す」と言って喜んで、とても応援してくれました。その一言は、
  役者としてのモチベーションの最大の支えになっています。父は今でももの凄く心配そうですが(笑)。
 じゃあそういう必然というか、流れが強烈にあるんだね。
 今思えば本当にそうですね。
 やおが中国で役者をする機会があるとよいね。
 実力をつけて、必ずやりたいと思っています。
 ちなみにやおは故郷の中国に帰るとどんな感じなの?
 やっぱり落ち着きますよね。包まれるような懐かしさがあります。空港から踏み出す第1歩はいつもホッと安心します。
 僕も故郷の静岡に帰るとホッとするねー。
 でも、それで日本に帰ってくると、これがまた安心するんです。不思議ですよね。両方ともとっても懐かしいんです。
  考てみると、僕のアイデンティティーは国籍ではなく、周りの空気や人を通して感じるものであるような気がします。

見つめる柴やお


―テーマは「絆」、演じる中で再認識する責任感―

 やおは小さい頃から演劇に興味があったというわけではないの?
 全然。でも映画は親がすごく好きなので、小さい頃からかなり見ていました。その影響か映画は尋常じゃなく好きで、
  その世界に対してものすごく憧憬の念があります。
 好きな映画は?
 ピカレスク映画、西部劇、時代劇が大好きです。ギャングとかマフィア、フィルム・ノワールなんかの男臭いやつから、
  軽いタッチのコメディ風のものまで。シブい雰囲気がたまんないんですよね。とにかくシビれたいんです(笑)
 今回の劇、役はどう?
 今回の劇のテーマの一つは「絆」です。僕の役は誰かに「絆」を取り戻してあげることによって、失った自分自身を取り戻す役。
  先ほど言ったように、僕自身人を通して自分を感じているところがあるので、その部分を大事に演じていけば、何か見えてくる
  ものがあると思います。
 主演するということに関してはどう感じてる?
 責任を持つという意味を日々再認識しています。舞台の上と外で、背負わなければいけないものの重さを痛感しています。
  あと、主役をやることで今まで曖昧にしか見えなかった物事にしっかり目が向くようになってきました。今までは自分の演技
  のことばかり重視していましたが、スタッフさんや他の役者さんの大切さに改めて気づかされ、自分と他の役者さん、スタッフ
  さんとを同じ次元で捉えられるようになってきたんです。組織全体でいいものを作る意識というのでしょうか。
 地下空港はどう?
 マグマのような集団だと思います。熱くたぎるモノを、ヤスロウさんを中心にしてどんどん火山の頂きに向かって押し上げている
  感じで、押さえきれないモノが湧き上がる、とでもいうのでしょうか。その分荒くて危うい印象はあるんですが、すごく
  スリリングで、一緒にやっててめっちゃ楽しいです。
 地下空港はそれぞれの表現者がいて初めて成り立っている。今その中央にやおがいて、みんなの力で舞台に上がるということ。
  それはすごく有り難いことだよね。みんな良い作品を作りたいっていう風に思ってる。それから「この人のためにやりたい」
  という気持ちの結晶でもある。その部分を感じるのは大切なことだね。
 詳しくは言えませんが、今回の舞台はスタッフさんもアグレッシブですからね(笑)。やりながら「お前もやるな!」
  っていうのをお互い感じれたらいいですね。

―自分の出る作品で、見る人をシビれさせたい―

 今後の目標は?
 やっぱり憧れのピカレスク映画とかには出たいですよね。自分の出る映画で見る人をシビれさせたい。凶暴なギャングの若頭役
  とかは是非やりたいです。僕の夢ですね。悪い役が好きなんですよ(笑)。
 なるほど。役者という仕事を通して何を表現したい?
 まずはこの仕事を通して、親とか友だちとか身の回りの人たちの思いを背負って、その思いに応え、まわりの人たちを支えるのが
  目標です。表現という点では、常に新しい演技に挑戦して、毎回見る人を驚かせ、感動させたいです。笑わせたり、シビれさせ
  たり、泣かせたり、怖がらせたり、いろんな面を含有した厚みのある役者になりたいと思っています。
 では、最後にお客さんにメッセージを。
 押し寄せるマグマの奔流、縦横無尽に弾けるスパーク。恵比寿siteの空間が、地下空港の奇術に歪む。シビれたいなら、
  田畑売ってでもカマンベイベー!!

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今まさに役者としての成長真っ只中にいる柴やお。
その物憂げな視線の先に見つめるものとは!?
3/21(土)-22(日)、恵比寿にて、是非その晴れ舞台をご覧ください!!!

(写真:かとうちなつ)


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■前作「幻のセールスマン」対談集 <<『幻の対談』>>